2012年9月9日(日)に第14回当事者研究会を開催しました。
まだまだ暑い日でしたが、そんな中ご参加いただきありがとうございました。
この前の日に群馬県庁の「こころのふれあいバザー展」で発表してきたばかりで、スタッフは若干おつかれ気味。お互いにフォローし合いながらの運営でした。
予定を少々変更して、午前の部は「当事者研究の進め方」の研究、午後の部はライブ当事者研究を行いました。
『認知行動療法、べてる式。』を元に、「当事者研究の進め方」についての勉強会を行いました。まずは、当事者研究についてのアンケートから。
当事者研究を進める時、どんなことを心がけていますか?
・おもしろがる
・本人に教えてもらう
・本人が思っていることを話してもらう
・発言を誘導しないようにする など
進行する上での苦労は?
・進行役が自分の意見を言っていいものか?
・テーマを出した人からどう話を聞きだしたらいいか?
・場が沈黙になったとき
・話がそれたとき など
実際に進行役をつとめたことのある方から意見を聞くと、話の聞き方について迷ってしまうことが多いようです。そこで「どのように話を聞いたらいいか」を考えるために、当事者研究の構造を見直してみました。
まず、当事者研究の理念の中からこの2つに注目します。
この2つの理念は、支援者・当事者・仲間が協力して問題とつきあっていこうとする、当事者研究の独特の構造(協同的問題解決)の柱となっています。
そして、その構造を場に作り出すためのキーワードが「外在化」です。問題を外在化することで、人と問題を分けることができ、その問題をみんなで一緒に眺めることができるようになるからです。
したがって、当事者研究の場では「何をどのように外在化するか」が重要な視点となります。
「何を」外在化するかについては、認知行動療法の基本モデルが参考になります。
どんな問題が起きているのかを明らかにしていくためには、環境(状況・他者)と個人の体験(認知、気分・感情、行動、身体反応)を一つ一つたずねていけばよい訳です。
また「どのように」外在化するかは、言葉にして話す、ホワイトボードに書き出す、図にする、ロールプレイする、など様々な方法があります。
このように、「何を」「どのように」外在化すればよいか方針を持っておくことで、進行の助けとなります。また、苦労を抱えがちな進行役にとっては、質問の手がかりを持っておくことが安心につながるのだと思います。
ちなみにこちらは、べてるまつりのおみやげの「当事者研究ノート」です。基本理念がかわいいイラストでまとめられていて、とっても分かりやすい!ピアリンクの中でも人気のアイテムで、今後は会場でも販売できるかもしれません。
午前の部にも参加されたOさんがテーマをお持ちでしたので、午後の部ではみなさんと一緒に研究をすることになりました。
Oさんは小さい頃から、集団にとけこむのが苦手だったり、コミュニケーションの場で苦労を感じていたそうです。対人恐怖や視線恐怖もあって、大学は卒業したものの就職活動はしませんでした。「どうせ自分はダメだからムリだ!」というお客さんにやられながらも、「このままではいけない」という思いが出てきて、コンビニのアルバイトを始めて現在1年半も仕事が続いているということです。
しかし、店長さんから成長が遅いと言われたり、同僚と比較されてイライラを感じることがあるそうです。また、同じミスを繰り返してしまうことに焦ったり、協力して仕事をするのが苦手で一つの仕事にしか集中できないことに苦労も感じられているそうです。
仕事のことで悩みはじめるとよけいに自分に自信が持てなくなり、「自分に将来はあるのだろうか」「一人前にできないなんてダメだ」というお客さんが来ます。一時的に人との接触を避ける事で自分助けをしていると、そのうちに「このままじゃダメだ」というお客さんが来て、専門学校を受験しようとしたり就職活動を始めたりするというサイクルが始まるのだそうです。
そんなときに「立ち直れる方法を教えてほしい」というOさんの希望があったので、みんなで意見を出し合いました。一人苦労賞をすること、発達障害かどうかを確認する、支援センターに相談する、他のひとからねぎらってもらうなどのアイディアが出ました。
また、1年半も仕事が続いているということは、実は店長さんからも既に評価されているのでは、という意見も出ました。この日の前日にも仕事をして、疲れた身体のままピアリンクに来てくださっていたことも分かって、Oさんは既に十分がんばっている、むしろ全力疾走系なのでは、という意見もありました。
そんながんばっているOさんに、参加者全員から励ましの言葉を伝えて、今日の研究会は終わりました。これからも研究を続けて、自分助けの技を磨いていってほしいなと思っています。遠くからですが、Oさんの今後を応援しています。