第15回当事者研究会


2012年11月11日(日)に当事者研究会を開催しました。 秋も深まり朝晩は冷え込んできましたね。今回は2か月ぶりの研究会でスタッフ皆緊張気味でした。

 

向谷地さんをお招きして「当事者研究の現象学」のお話や、いつもの通りライブ当事者研究を行いました。

 

 

午前の部: 現象学と当事者研究~バザーリアの実践を通して~


今回のテーマは、「現象学と当事者研究~バザーリアの実践を通して~」

近頃べてるねっとやべてるの講演会でよく耳にする「現象学」だけど、なんだか難しくてどうもよくわからない…。向谷地さんの説明で理解を深めつつ、当事者研究についてみんなで考えました。

 

現象学は、「本人の主観における妥当」という視点を持つことから始まるようです。実際に起きている事かどうかはわからないけれど、本人にとって「起きていること」があればそれは存在するというと立場をとります。そして、エポケー/epokhe(保留するというこ)という態度を大事にするそうです。

 

東大の先生によると、べてるの家の当事者研究は、まさに「現象学」の実践なのだそうです。

べてるの当事者研究でも、「なんで統合失調症になったのかなんてわからないけど。幻聴さん・お客さんかどうかはわからないけれど。それはそれで置いといて、、、さてどうしようか?」というように、事実・真実・原因・理由はわからないけれど、「それはさておき」、今、抱えている問題や苦労をどうしようか?と、べてる用語でいう「棚上げ」(≒エポケー)という技をいつも駆使しているんじゃないかな、と思いました。

 

今、当事者が困ったなと感じている問題や苦労(本人の主観における妥当)について、そこに困難を乗り越える知恵が眠っていると考え、とりあえずよくわからない確認できないものは棚上げし(現象学的還元)、繰り返し起こるパターンや条件を見極めようとしていく作業(本質観取)。というように、当事者研究と現象学を並べて考えることができそうです。

 

東大で現象学を研究している学生さんが、べてるの家の当事者研究を見て、現象学がよくわかったと言っていた、というエピソードも、なんとなく頷けますね。

現象学の他にも、ユクスキュルの環境世界に関連した、「人は、人それぞれの環境を生きている」という話が続き、なるほどと思ったり、ダニの体感覚に思いを馳せたり?非常に内容の濃~い午前の部でした。

フランコ・バザーリア→詳しくは、映画『人生、ここにあり!』をぜひ観てくださいね♪

    

    参考:大熊一夫著『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』

              ジル・シュミット著『自由こそ治療だ』

 

 

午後の部: ライブ当事者研究 自分の本当の気持ちは?


 

午後の初めは自己紹介と、今日の気分体調、好きな飲み物を話していきました。この季節になると温かい飲み物がおいしいですよね。

 

はじめの研究はスタッフりかさんです。

 

りかさんは躁うつの苦労があります。躁のときに始めたことが、うつになるとやる気がなくなってしまいます。なんで始めたんだろうとバカらしくなってしまいます。

 

現在、精神保健福祉士の資格を取るために学校に通っていますが、体調を崩してからはやめたくなってしまいました。留年が決まってしまいましたが、このまま続けたい気持ちもある反面、やめるなら次のスクーリングも意味がないなど、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまいました。うつになり誤作動を起こしているのかもしれないという迷いもあります。

 

過去を振り返ると同じようなサイクルがありました。始めるときはバブルのように上がり、そして1年ではじけてしまいます。「結婚に似ているね」という意見もありました。

 

低空飛行で続けていく方法を仲間に聞いてみたら、「一緒にいる仲間がいたこと」「予想外のこと(がっかり)と上手に付き合う」「厳しかったがやめずに仲間と頑張った」という意見が挙がりました。

 

りかさんは学校に仲間がいなかったことに気づきました。学校のみんなが敵に思えてしまい、幻聴さんやサトラレの苦労も出てきて学校に行くのが怖くなってしまいました。

 

うつによって学校に行けなくなってしまったと思っていたのが、実は幻聴さんやサトラレの苦労があったこと、自信がなかったこと怖かったことがわかってきました。

 

来月のスクーリングに行くことを目標にしました。みんなで応援しています!


続いてTさんの研究です。

Tさんは本を予算以上に買いたくなってしまう苦労があります。本を読むよりも買うほうが多くなってしまい、部屋も狭くなってしまいます。

 

会場でも「読みたくて本を買うけど読まない」人は多いようです。

 

「今買ったほうがいいよ」「全巻集めなきゃ」など自分をそそのかすお客さんの存在も見えてきました。 

 

Tさんは多く本を買いたい気持ちと、本を読み切れないモヤモヤの解消方法のアドバイスをもらいました。

 

 「お客さん対策(買っても読まないかもと考える)」「積ん読をものさしで測って買い過ぎの判断する」などなど。今後は自分へのご褒美として買うことや、予算制限をして買うという目標が立てられました。


最後はOさんの研究です。本音と建前の見分け方をみんなに相談しました。

 

職場の方に「プラモをください」と言われ、持って行ったら「ほんとに持ってきてくれたのですか、そんなに気を使わなくても良いのに」と言われました。Oさんは「持ってこなくても良かったのかな?」建前で言ってくれているのか、うれしくて言ってくれているのか疑問はありますが、「嫌われたくない」気持ちを強く持っています。  

 

 

約束を守るのは当たり前と思っていましたが、最近は表情などを伺いながら考えるようもしているそうです。 また、「人に何かをあげて関係を保とうとしているのでは」というお客さんも来るようです。

 

「関係性の中で言われてすぐに返事をするのではなく、少し考えてから返事をするのもいいねなど」のアドバイスもありました。

 

最後に「約束をしたら必ず守ったほうがいいのか?」をみんなに聞いてみました。

 

「それだと疲れてしまう」「守ったほうがいいけどいつも守れるとは限らない」「気軽に約束しない」「約束の優先順位をつける」「全部やる必要はない(表情など伺いながら)」「した約束は守る、その前に相手の人を観察する」などの意見が出ました。

 

Oさんは相手のを観察して約束したほうがいいか考えてみたいとのことです。「皆さんに共感してもらえて嬉しかった」と感想をおっしゃってくれました。

 

皆さんも是非当事者研究してみませんか?