第17回当事者研究会


2013年最初のピアリンクは1月13日(日)に開催しました。急きょべてるのメンバー・スタッフ伊藤知之さんが参加してくださることとなり、内容も盛りだくさんの研究会となりました。

 

午前の部:新春!ピアリンクあるあるの会


午前の部は「新春!ピアリンクあるあるの会」を行いました。あるあるの会は、苦労とか弱さの体験を語り「こういうのあるある」自分だけじゃないんだなというつながりを感じられるプログラムです。ピアリンクの運営で色々起こってくる苦労をメンバーと語り合い、今回のテーマとなりました。

 

 

ピアリンクでは運営のためのミーティングを毎週しています。メーリングリストでミーティングの開催をメンバーに呼びかけますが…

  • お休みしますというメールが立て続けに届き、メンバーが集まらない。
  • 誰か呼びに来てくれるから待つという人がいて。時間通りに始まらない。

メンバーが集まらなくてミーティングが開催されない時があったり、簡単に休んでほしくないというイライラ感を持つメンバーや、本当は参加したいけれども体調が悪かったり、役に立てない自分はダメというようなお客さんにやられる逃亡の苦労を抱えるメンバーがいます。ミーティングが始まるまでが大変ですが、始まってしまえば楽しいです。

 

続いてミーティング中の苦労です。

  • ピアリンク発足当初の熱い思いが下がってきた。
  • ミーティング開始後は活気がなく、「調子悪いのかな?イライラしているのかな?」と周りを見回して、話さないほうがいいと思う。
  • ミーティングでは次回ピアリンクの役割分担を決めますが、すぐに決まらずお互い牽制しあい「誰かやってくれないかな」「自分がやらなきゃマズイよな」「前回もやったし出しゃばりと思われる」などのお客さんの影響を受ける。

めんどくさいと思ってはダメと気持ちを抑え苦しくなっているメンバーや、周りの顔色をうかがって悪いことをしたかもしれないと思うメンバー、自分が役割を率先してやらなければいけない、でもでしゃばりと思われるとお客さんと葛藤しているメンバーなどお互いの苦労を出しあったことで「あるある」という自分だけではないつながりが見つけられました。

 

参加者の皆さんに似たような苦労はありますか?と問いかけたところ、「職場で似たような苦労があり同じ苦労があってつながりを感じました」とおっしゃってくれました。

 

ピアリンクは精神障がいを抱えた当事者が運営しています。それ故の苦労があります。調子を崩してしまったり、人員が欠けてしまうことです。べてるでは「安心してサボれる会社づくり」をしていて、全員が集まることが少なくても、互いにサポートし合いながら穴を埋めることが行われているようです。もしかしたら自分が休んでしまうかもしれない「おたがいさま」という気持ちを持つことが大切になります。

 

ピアリンクは喧嘩もなく上手く行ってるよねと向谷地さんはおっしゃります。互いに苦労を共有して起こることを想定していると、何があっても順調と思えるような気がします。これからも「あるある」の苦労を定期的に発信していけたらいいなと思いました。

 

今年もピアリンクをよろしくお願いします。

新春!ピアリンクあるあるの会のスライドもご参考にしてください。

 

午後の部:当事者研究の動向と家族当事者研究


 午後の部前半は、伊藤さんから最近の当事者研究についてお話していただきました。ピアリンクの前日に開催された、東京・中野での当事者研究実践講座の報告や、今後の予定等を教えていただきました。べてるねっと等で情報が詳しく公開されると思いますが、2月に当事者研究についての勉強会、3月に北九州で当事者研究実践講座、4月に統合失調症学会が開催されるそうです。

 また、現在べてるでは「当事者研究ネットワーク」という事業が展開されているそうです。全国の研究者の研究報告、自分を助ける「技」をデータベース化し、色んな研究を参照できる仕組みを作っているそうです。

 午後の部後半は、名古屋からいらした南部さんに研究発表をしていただきました。保育士をしている南部さんは、新しい保育園を開設するための準備の中心的役割を担っています。予算を立てたり、役所への書類作成等の仕事を担当していて具合が悪くなるという苦労がありました。双極性障害・パーソナリティー障害の娘さんが当事者研究に熱心に取り組んでいるということで、南部さんは娘さんに相談しました。娘さんから「その苦労に名前をつけてみては?」という助言をもらい、南部さんは仕事での苦労に「使い込みのコミットさん」という名前をつけました。

 「コミットさん」は、南部さんが一人で新しい保育園の予算を立てていて「保育園のお金を自分のために使い込んでいるのではないか」といった罪悪感から来ていることがわかりました。また、南部さん自身、お金の管理が苦手で、そういった苦手意識とも関係があるそうです。

 南部さんは、苦労(お客さん)に「コミットさん」という名前をつけたことで、気が少し楽になったそうです。上司から「予算ないよ。削れ」という圧迫を受けて、どんなに予算を削っても「コミットさん」はやってくるということも発見したそうです。また、完成した予算に関する書類を提出する際、上司にお菓子を持っていくという助け方を実践したそうです。すると、「コミットさん」は静かになったそうです。

 「当事者家族」という立場からの研究発表は、ピアリンクにとっても新鮮で、参加者の方々にとっても参考になったようです。病気を抱える当事者への対応の仕方、気持ち等、特に家族の方の意見が活発に交わされた研究会となりました。

 これまで、病気の苦労を抱える当事者からの研究発表が多かったですが、今後また「家族」という当事者からの研究も聞いてみたいと思っています。