第24回当事者研究会


 2014年を迎えて初めての当事者研究会開催です。今回は、県内外の医療・福祉関係機関の支援者・当事者をはじめ、約30人もの方に参加して頂きました。大盛況でした。

 

 

午前の部:発達障害当事者研究(の研究)


 午前の部は、向谷地さんを講師として発達障害当事者研究を行いました。今回の企画化のきっかけのひとつとして、発達障害の苦労を抱えた当事者の方の参加も増え、またピアリンクスタッフ間で「そうした方々とどのように当事者研究を進めていったらよいか」といった疑問が浮かび上がってきたことがあります。

 向谷地さんが携わっている精神科デイケアの発達障害のメンバーさんから頂いたアンケート結果です。写真が見えにくいかと思いますので一部抜粋すると、「口語でしか文章がつくれない」「『はい』と返事はするが、頭には入っていない」「フラッシュバックがつらい」「『時計回りで』と言われてもわからない」…書籍等の情報だけではわからなかったことばかりでした。個人差があると思いますが、様々な苦労がありますね。

 ある企業での経験から、発達障害の当事者を職場で活かすコツを示してくださいました。発達障害を抱える方の働く・周囲の人が応援するコツでもありますが、ここに挙げられているものって、いわゆる健常者と呼ばれる人にも当てはまりませんか?

 最後に、発達障害を持つ当事者の周囲の人はどのように関わったらよいかを示してくださいました。本人も周囲の人も「つながり」「自己決定」「練習」がキーワードでしょうか?

 

 今回も発達障害の経験を持つ専門家(当事者)がいらっしゃっていたので、それぞれ自身の経験を語り合い、参加者と共有して午前の部が終わりました。

午後の部:ライブ当事者研究


 参加者のご要望で前半に当事者研究発表、後半にいつものライブ当事者研究を行いました。

 栃木から参加してくださったAさん。「幻聴さん」や「爆発」「逃亡」「ひきこもり」の苦労の専門家です。ピアリンクの研究会には、通所している事業所のスタッフ・メンバーさんと一緒に何度も足を運んで下さっています。また事業所でも当事者研究を行っており、今回はこれまでの研究をパワーポイントにまとめて皆の前で発表してくださいました。

 「逃亡」や「爆発」等、今までの苦労のパターンを図式化し、それぞれの助け方のメリット・デメリットを整理していました。昔は「お前は皆に嫌われてるぞ!」といった嫌な幻聴さんばかりでしたが、現在の仲間とつながってからは、困った時にアドバイスをしてくれるような幻聴さんが現れたり、幻聴さんとの付き合いや助け方が変わってきたそうです。

 最近Aさんは仲間と一緒にピアサポートグループを発足したということで、その活動を続けること、また今年11月開催予定の全国当事者研究交流会での発表という目標を掲げてくださいました。Aさん、貴重なお話ありがとうございました。

 午後の部後半は、2名の方の当事者研究をしました。

 まず一人目は初参加の女性Sさん。発達障害の診断を受けたものの、診断を受け入れられないといったお話や、家事等を協力してくれない夫との関係について研究を進めました。Sさんは、気分・体調に波がありながら、ゴミ出しや洗濯、料理、光熱費等の支払い等、苦手な家事全般を頑張っているそうです。家事の一部を夫にお願いしてみたり、支援者の方に相談したりと、これまで頑張ってきました。研究会で、Sさんの良い所・頑張っている所を皆で出し合ってもらうと、「明るくてまじめでしっかりしているSさん」が浮かび上がってきました。皆の意見を聞いて、Sさんは「これまで、全く逆でダメな所ばかりだと思っていた」と語っていました。初参加でありながら、テーマを出して下さったSさんの勇気に拍手です!

 

 二人目は会社を休職中のSさん。「復職に向けて」というテーマで進められました。2年前に昇進後、徐々に仕事でミスが続いていったそうです。妻や上司に相談し、病院に行った所、昨年秋頃から休職するに至ったそうです。Sさんは、来月末頃には復職予定で、「働かなきゃ」と思うものの、会社での嫌な出来事が蘇ってしまい思考・行動が止まってしまう、といった複雑な心境を語って下さいました。ただ、Sさんのすごいところは、妻や主治医はもちろん、自分で専門機関を見つけて色々な所に相談しにいっているところです。また各機関でのアドバイスを参考に、「より良い自分になりたい」と意欲を燃やしています。いわゆる専門家とは異なった、同じような苦労を持つ当事者からの意見やアドバイスを聞いて、Sさんは安堵した様子で帰られました。研究会という場を利用した上で、今後は主治医や障害者職業センターに相談しに行ったり、リワーク施設を見学に行ったり、復職に向けて準備していくそうです。

 

 お二人のテーマについては、具体的な解決策は出てこなかったかもしれません。でも、ちょっと自分のことを情報公開をしてみることで解消され、次の一歩を踏み出す希望につながるのかもしれません。

 前回の研究会から販売している毛糸商品たちです。

 ピアリンクスタッフの島田母子が制作しています。一度履いてしまったら履かずにはいられない靴下がオススメです。お手にとってお試しくださいませ。