第25回当事者研究会


 2月は大雪や講演依頼が重なったため、2か月ぶりの開催となりました。

 (撮影スタッフがテーマに夢中になってしまったため、当日の写真は少なめになってます。申し訳ございません。) 

 

 

 

午前の部:「本当の自分」て何だろう? ~「個人」から「分人」へ~


 2月、スタッフの島田が『ハートネットTV~シリーズ増える20代の自殺』(NHKEテレ)に、自殺未遂経験者として出演しました。その中で、「生きづらさ」を生き抜くヒントとして「分人主義」という考え方が紹介されていたため、まずは番組の映像を流して皆さんと一緒に考えました。

 「分人」ワークショップの様子です。参加者の皆さんと一緒に、自分にはどんな分人がいるかを一人ひとり紙に円グラフで書きだして発表しました。父、母、子、兄弟、姉妹、男性、女性、会社員、先輩・後輩、一人でいる時の自分などなど・・・。一人ひとりにたくさんの「分人」があります。

 「分人主義」では、「個人」という一つの確固とした自分があるのではなく、対人関係ごとに生じる異なる自分をそれぞれ「分人」と呼びます。「分人主義」を提案した芥川賞作家・平野啓一郎氏は、苦しんでいる・困っている分人も持ちながら、好きな分人・心地よい分人を手がかりに、生きづらさを生き抜こうという考え方を提唱しています。

 「分人」は、対人関係の中で生じるため一人で新しい分人を探ることには限界があると思います。他者が必要で、これは当事者研究の理念の「自分自身で、共に」といったことにもつながる気がしました。

 

 

午後の部:ライブ当事者研究


 午後は、お二人のテーマについて研究を進めました。

 

 一人目は、久しぶりのご参加のWさんの「むなしさの研究」です。20年続けてきた仕事を辞めて、年中むなしさを感じているとのこと。うつ症状もたまにあり、死にたくなることもあるそうです。

 研究は、午前中の「分人」の話もからめて進められました。かつては仕事の分人が70%を占めて、残り30%が趣味や家庭での分人を占めていました。しかし、現在は仕事を辞めて仕事の分人がなくなり、その分が完全に抜け落ちた感じだそうです。

 Wさんは、今後語学の勉強をするために色々な情報を収集しているそうです。Wさんは、そんな希望を足がかりに、新たな分人づくり、「人生の意義」などについて今後研究をしていきたいそうです。

 

 二人目のKさん。ご自身の体験から「自分を好きになる、て何だろう?」といったテーマを出して下さいました。大学以降、見知らぬ人から見られたりすると、「嫌われてるのでは?」「好かれないのでは?」といった不安を呼ぶお客さんがたくさん来るそうです。そうした周囲の人たちが下を向いて通り過ぎたり、自分の近くだけ走ったりする状況を見て、「やっぱり嫌われてる!」「自分が原因だ」と、お客さんが確信につながるそうです。

 お話を聞いていくと、Kさんは思春期頃のコンプレックスと結びついているとおっしゃっていました。今日は、「今後同じような場面でどうやって自分を助けていくか?皆はどうやって助けているのか?」について、参加者からアイデア・経験を出し合いました。

 自分のお客さんを情報公開して、相手に確認を繰り返すなど、Kさんの実験結果をまた聞いてみたいと思いました。