第5回当事者研究会は、2011年9月11日に華蔵寺クリニック・デイケアファーブラで行いました。
スタッフにとっては慣れ親しんだ会場です。これまで準備などであわてることもありましたが、今回はより安心して研究できる環境となりました。
午前の部では、先月「べてるまつり」に行ってきたメンバーに、べてるまつりでの苦労を語ってもらいました。
はじめに「べてるまつり」でのメンバーの活躍と、幻覚妄想大賞の様子を映像で振り返りました。
星野さん
懇親会のような場所が苦手でした。飲めないと「場が白ける」かもというお客さんが来ていて、アウェイ感を感じていました。「部屋でブログを書く」という役目を活かして、自分を助けていました。
村岡さん
登壇発表をしました。べてるの早坂潔さんのお客さんが来ていて「研究が浅いな、まだまだだな」と言われているようでした。「できるだけ正直に、まずは伝える」というメモを見ながら、なんとか発表できました。
すばるくん
旅行の前から痔になってしまいました。しかし「旅行代を出してもらったから、何か持って帰らないと」という期待お客さんが来ていました。痔がなかったら、べてるから逃げ出してたかもしれません。痔のおかげでその場にいることができたし、話ができました。
島田さん
ポスター発表をしていたその会場で、自分のヘラヘラフラフラ病が出ていました。懇親会の片付けを手伝ったり、ピアリンクの宣伝をついがんばっていました。しかし「何しに来たんだろう」というお客さんが来ていました。「何を話せばよいか分からない」さびしさから、自分を助けていたのかなと思いました。
「べてるまつり」に行ったメンバーは、みんなから「うらやましいな」と思われていましたが、実は大変な苦労をされた2日間だったということです。
小出さん
べてるのセミナーハウスに2週間泊まって、見学してきました。幻覚妄想大会で表彰されていた橋本さんの、幻聴さんパトロールの現場を見ることができました。
また、自分のことを語らないと調子が悪くなることがよくわかりました。昆布作業の手伝いばかりしていると、「俺は作業しに来たのか?」というお客さんが来ました。お客さんとの会話が増えていって、1日寝込みました。その後、SAに誘ってもらったりして、べてるのメンバーたちと苦労の話ができたのがよかったです。
午後の部は、これまでピアリンクで研究をされた方の、その後の報告から始まりました。
第3回で発表したOさん、第4回で発表した小田さんから、それぞれ報告をいただきました。Oさんは用意したメモを見ながら、落ち着いた口調で話してくださいました。
午後の部では、2人の方がライブ当事者研究を行いました。
一人目のAさんは、自分の研究を持ち込んでくれました。自己病名は「無意識KY発達障害自己反省会ジャック病」です。
Aさんは仕事などで無意識のうちに全力疾走してしまい、あとから「KYかも、融通が利かないかも」というお客さんが来るそうです。特に、夜にお客さん・幻聴さんと反省会が開かれて、調子が悪くなってしまうということでした。
Aさんは発達障害の診断も受けているそうです。記録をまとめたり、色々な作業を平行してやるのが苦手だということです。
参加されたみなさんから、新しい助け方のアイディアをもらいました。夜の反省会を研究会にする(一日のよかったところ、さらに良くするところを見つけてあげる)、自分の味方をしてくれるお客さんを増やす、自分の良いところをほめるというアイディアが出ました。また、マルチタスクの練習として、料理をしてみるというアイディアも出ました。
その後もAさんは順調に苦労されている様子ですが、みんなと研究しながら、さらに自分助けが上手になっていくとよいですね。
二人目はUさんが「疲れについて」というテーマを出してくれました。
Uさんはいま県内のデイケアに通っています。これから仕事を続けられるように、上手に休みがとれるようになりたいという相談でした。
デイケアまで長い距離を自転車で通うと、疲れてイライラしてしまい、感情の起伏が激しくなるそうです。しかし研究を進めてみると、Uさんはいろいろな場面で「さみしさ」を感じていることがわかりました。
例えば、「さみしい」から友達の誘いを受けて遊びにいくけど、友達といても「さみしい」ままということもあるそうです。また、ほっておかれたり友達と遊べなくてさみしいときもあるし、さみしいけど話しかけてほしくないときもあるそうです。
そういった場面でUさんには「なんで分かってくれないの」というお客さんも来ていました。
その時その時の気持ちを言葉で伝えられるといいね、というアイディアが出たので、ロールプレイで練習をすることになりました。デイケアスタッフの言葉に対して、自分の思いを伝える練習です。今日初めて参加された方にも、ロールプレイを協力していただきました。
相手の目を見てはっきり言えていたところ、感情的にならずに自分の言葉を確認しながら言えていたところなど、Uさんのよいところが沢山見つかりました。
Uさんの「さみしさ」の研究は、参加者に大きな共感を呼びました。これからも「言葉ベースの苦労」の世界を広げていってほしいな、と思います。
当事者研究に興味をお持ちの方や、いま苦労を抱えている方は、ぜひ一度遊びにいらしてください。スタッフ一同お待ちしております。