第6回当事者研究会は、2011年10月9日に華蔵寺クリニック・デイケアファーブラで行いました。
今回は特別ゲストをお招きしての当事者研究会となりました。
ゲストはべてるの家の伊藤知之さんです。
ゲスト効果もあって、これまでよりも大盛況の当事者研究会となりました。
午前の部の最初は、伊藤さんのライブ当事者研究でした。
伊藤さんは全力疾走研究のパイオニアで、自己病名は「統合失調症、全力疾走依存あわてるタイプ」です。
ピアリンクにも全力疾走で同じような苦労をしているスタッフが多いので、興味深く聞き入っていました。
伊藤さんは「群馬は全力疾走系が多く、全力疾走の聖地だ」とおっしゃっていました。
伊藤さんの苦労は、子供の頃から始まっていたようです。父親の顔色を伺って緊張感や不安感を感じて育ち、学校ではいじめを受けていました。「良い成績を取って、良い大学へ行き、良い職に就く」を目標にして頑張ることによって、自分のバリアを作ってきました。
べてるとの出会いは就職先が浦河町であったことです。
現在は、精神保健福祉士としてべてるの家で当事者スタッフをしています。
べてるに繋がってからは、気分や体調などを話す習慣があり、否応なしに自分のことを語る環境ができました。それによって、自分に張られたバリアが剥がれてきました。
伊藤さんの現在の苦労は、恋愛です。彼女は過去中毒があるので、ジャックされている時は、チョキチョキ作業を一緒にして切り離すようにしています。
ライブ当事者研究の後は、グループワークを行いました。
参加者が6~8名の3グループに分かれて作業を行いました。
「実際に起こったAさんに対するBさんの受け答え」をテーマに話し合いました。
やり取りを時系列に沿って紹介しながら、支援者の方にはBさんの視点に立ち、Aさんの発言に対するBさんの受け答えを考えてもらいました。
短い時間ではありましたが、色々な受け答えのアイデアや意見が飛び交っていました。
当事者や他の支援者の方の色々な意見を聞けたことが、支援者の方たちにはとても良い刺激になったようです。
支援者の方たちからは、「参考になった」という声もいただきました。
午後の部は、第5回で発表したAさんからの報告で始まりました。
ピアリンクでの発表後は、「夜の反省会」が「夜の研究会」になったことなどの変化や現在の心境を話してくださいました。
その後、2人の方がライブ当事者研究を行いました。
最初は、ピアリンクスタッフ佐藤さんのライブ当事者研究でした。
「自分の生きがい」をテーマに発表を行いました。
佐藤さんは、伊藤さんと同じく全力疾走型です。
自己病名は「全力疾走系(まぐろ型)他人の荷物を持ち過ぎ たまに繋がりを見失う病」です。
佐藤さんの苦労は、仕事を頑張り、さらに他人が抱えている苦労を横取りして自分の苦労の重荷が増えてしまうことと、仕事場や社会で人が信じられなくなり、転職を繰り返してしまうことです。
佐藤さんは研究をしてわかってきた「苦労のメカニズム」を図にして紹介してくれました。
仕事を頑張り、他人の荷物を背負い、人が信じられなくなると「死神さん」がやってきて、助け方として自殺サイトを見ます。すると落ち着き、また仕事を頑張る、他人の荷物を背負うというサイクルでした。
新しい自分の助け方を見出したく研究を重ねてきました。
現在は彼女とお付き合いをされていて、「苦労はあるものの幸せです」と語ってくれた佐藤さん。とても幸せそうな笑顔でした。
今までは仕事を頑張り、他人の荷物を背負うことを生きがいとしてきましたが、今は「恋愛とピアリンクで皆と繋がること」が生きがいに変わってきたようです。
参加者の方からも「自分の生きがいって何だろう?」、「生きがいを断言できることはすごい」などの意見が出ました。
「生きがい」はとても大きなテーマで、誰しもが考える共通なテーマでもありますね。
続いて参加者の方のライブ当事者研究を行いました。
その方は、とても言い出しにくい苦労の情報公開をしてくださいました。とても勇気のいる一歩だったと思います。
参加者の皆さんから「とても頑張っているんですね」、「人への気遣いがすばらしい」などの意見をもらいましたが、最初は頑なに「自分はそんなことありません」とおっしゃっていました。
しかし、時間が経つにつれて、だんだんと笑みがこぼれてきました。
そして最後には、満面の笑みで会場を後にされていたのが印象的でした。
今回の当事者研究会では、たくさんの "仲間の力" と "場の力(あたたかい雰囲気)" を感じられました。その力で私たちピアリンクの仲間も助けられました。
今後もたくさんの仲間に支えられながら、"仲間の力" や "場の力" を提供していければ良いなと感じました。